NINJA TOOLS

2019年01月25日

ムクドリのねぐら。

ある日の夕方。
男体おろしが強くなり、足早に車に戻る。
ムクドリの20羽ほどの群れが低い位置を飛んでいく。
そういえば、以前にも小さな群れがこの竹やぶにねぐら入りしているようすを見たことがあった。

竹やぶの風下に入り、録音機を地面に置いて、マイクに風が当たるのを防ぐ。

近くの電線に集まっていた群れが、日没時刻15分ごろを過ぎて竹やぶの中に飛び込む。
タケが強い風にそよぐたびに、ムクドリはやぶのなかでにぎやかに鳴き合う。

風を避けて置いた録音機の位置が悪く、芳しい音声は得られなかった。

日を改める。
気温が上がり穏やかな一日だった。
日没時間を確認し、竹やぶに向かう。

電線に集まっているムクドリの数は前回より少ない。姿を見られないよう、その反対側の位置にそっと陣取り、ねぐらに入る時間を見込んだうえで、録音を開始する。

ツグミがねぐらに向けて飛んでくる。ヒヨドリがねぐら入りを前に盛んに鳴き合う。モズも暗くなる前になわばり宣言の鳴き方をしている。目の前のやぶのなかでウグイスやシロハラ?が鳴き続ける。なんとなく繰り返し経験してきた日没時の情景。
ムクドリが電線を飛び立ってやぶに入ってきたようだ。羽音が近づいてくる。数羽が小さく鳴いている。

しかし、前回のような、にぎやかな鳴き合いにはならなかった。ムクドリは沈黙したまま。

近くの送電鉄塔にねぐら入りしているムクドリの群れを観察したこともあったが、そのときは、にぎやかに鳴きかわしていた。

鳥のねぐら入りのようすを見ていると、当然ながら、それらは、ほかの生き物に見られることについて、とても気をつかっている。
にぎやかに鳴きかわしていては、タカなどの天敵にねぐらの存在を喧伝してしまうようなもの。
風が強い日に見たねぐらや、鉄塔で見たねぐらは、互いに視認できてしまう状況ゆえ、牽制する鳴き方をしている、といったところか。

都市部のムクドリのねぐらは、騒音や糞害が問題になることが少なくない。しかし、そもそも町なかにねぐらをつくってしまうという状況じたい異常ではないか。
適正な数で、自然な状態でねぐらを形成することができれば、うるさいと感じるほど鳴き合うこともない。静まったねぐらの音声を再生しながら、いまさらながらそれを感じる。

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2019年01月13日

ズミの尾根へ。

寒さが厳しくなり、ズミの林に鳥が集まるころ。
さて、どこのズミ林にしよう。場所の選択肢はだいぶ増えた。

そういえば。灯台下暗し。そばにある。雪道に入らなくていい。いまの時期ならヤマビルもダニもいないだろう。ゆっくり起きてゆっくり支度して出発する。

このフィールドは、木々の枯死や草花の減少、ヤマビルやダニの増加に嫌気がさして、しばらく近づいていなかった。
秋以降、近辺を歩いて気づいたが、ニホンジカの気配が少なくなっているのかもしれない。様子を見ておこう。

しかし肝心のズミはというと、それが生える最初の場所は実がほとんどない。

進んでいく。

この地は歩いていれば必ずニホンジカの警戒声を聞いたものだが、ない。ササ原も復活し始めているのか。個体数調整という名の駆除がだいぶ進んだのかもしれない。
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それでも、膝上まで伸びたササを抜けると、この時期でもダニがズボンにつく。気温はマイナス3℃だ。こんなに寒くてもいなくなることはない。
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シロヨメナも見受けられる。予断は許されない。

けっこうしっかりしたクリの枝が折られている。大きなツキノワグマもいたようだ。
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ヒノキ、ズミ、イタヤカエデ、ツルウメモドキがまとまって生えるいつもの場所に陣取り、コンビニ食材でひとり新年会を開催。以前もこんな写真を撮っていたはず。
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イタヤカエデの下でじっとしていると、エナガ、コガラがこの木を目指して集まってくる。その甘い樹液目当てに虫がいたり、枝先から甘い成分が出ていたりするのだろう。
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イタヤカエデのフラクタルな枝模様。

ズミの実に集まるウソ、アトリ、ヒヨドリの声が、そしてヤマツツジの木立の向こうからルリビタキの声が、そして遠くからはキツツキ科の鳥のコツコツと木をたたく音が聞こえる。山頂方面の空を、トビがゆっくりと飛んでいく。
日光では絶滅危惧種といっていいかもしれないツルウメモドキが思いのほか残っていて、その実を食べに来ているヤマドリが、警戒のための短い母衣打ちをする。

じっとしていたら体が冷えてしまった。
ササ原を上り詰める。
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ゆっくりと降りていく。







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2018年12月19日

ヨシ原の植物と、小鳥たち。

いつもの草原に、重機が入った。田んぼの用水を確保するために、本流に接する取水、放水部の石、砂利の量を調整している。

今年はまだ霜がそれほど降りてないので、草原の枯れ草もまだ倒伏していない。重機のわだちに沿って歩かせてもらう。
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適度に開けた空間は、鳥たちが多い。

両脇から、小鳥たちが小さく飛んではヨシ原へと逃げ込んでいく。この飛び方は。
オオジュリンの、チュィという小さく優しい声がする。

飛び立ったあたりのヨシの茎を見てみると、食べ跡が多く見つかる。図鑑などによるとカイガラムシという小さな虫を食べているようだ。
オオジュリン食痕 カイガラムシ
カイガラムシは、アブラムシのように取りすぎた糖分を排泄するしくみがあるようで、じつはオオジュリンも甘党のよう。

草々は実りの時期をむかえている。
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芽生えの時期に歩いて気づいたが、この河原のヨシは、地上に伸びる茎で増えていくツルヨシという仲間のようだ。

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(ノギがあるように見受けるので)ススキ。

これらに集まるホオジロ、シメ、カシラダカ、カワラヒワ、ベニマシコなどが先々で逃げていく。

こういう実をついばんでいるのか、と、ふとマメ科のそれをつまんでみる。
ツルマメ
手に取ってみて初めて気づくことがある。

このねじれた殻のなかに種があるものとばかり思っていた。しかし、入ってない。種だと思っていたが、葉だったのか。

正体を探るべく、よく目にするカラスノエンドウをはじめマメ科に当たってみる。そういえばツルフジバカマなど夏に見ていた。いきついたのは、ツルマメ。

実の時期に写真を撮っていた。
ツルマメ

種がはじける時期の写真も撮っていた。
ツルマメ

さやは乾燥するとねじれ始め、種をはじき出していくという。その結果、さやだけが残ることになる。

春以降、ススキやツルヨシが伸びてしまい、草原には入っていくことができない。ツルマメはその見ぬ空間で育ち、自身の種子を落としていた。小鳥たちに食べ物を供してくれていた。

そして、そんな過ぎ去ってきた季節を思い浮かべながら歩く。












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2018年12月08日

冬の向こうのフモトミズナラを。

すでにほとんどの木が葉を落としてしまっている。もう少し早く気づいていれば。

いつも歩いている場所の多くは、それほど標高がない場所でもミズナラが生えていることは珍しくない。本来の標高位置で生えている種子の、拡散によるものだと思っていた。

その感覚で低山のフィールドも歩いていたので、ミズナラのような木を見ても、特段、違和感はなかった。いっぽうで、それらの木を、両者の違いの最も大きな点である葉柄の長さはさておき、「ミズナラになんだか似たようなコナラ」として混同することも多かった。

さらに標高の低い河畔林などに生えるコナラを見つけると、葉の鋸歯のとがり方などが異なるので混乱することがあった。

長野のフィールドでも、コナラより低い位置に生えるミズナラを見て、違和感を覚えたことがある。

いまさらながら、これらの混乱の原因が認識できるようになった。どうやら、低山のフィールドで多く見ていたのは、ミズナラではなく、コナラのフモトミズナラという亜種のようだ。

これを、コナラと、あるいはやや標高が低めに生えるミズナラと混同していた。よって、本当のコナラを見つけると、必然的に違和感が生じてしまう。この亜種の分布はそれほど広くないため、勘違いも地域特有のものといえるかもしれない

コナラの亜種扱いになっているのは、遺伝子が近いためという。ミズナラとコナラが気候変動を経て気温や標高により棲み分けるようになり、さらにもうひとつ、違う「種」が生まれようとしている。生き物の分布の仕方は、ときとして、地球の寒冷化、温暖化の大変化を超えた、遥かなときの流れを感じさせてくれる。

コナラは葉に小さな毛が多く、新緑のころ遠くから眺めると、そのきらめきで気づくことが多い。亜種フモトミズナラは、それがないようだ。来季に向けて忘れてしまうことのないようにしよう。


標高370m 栃木県高原山塊西麓 11月16日
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鋸歯のとがり方がやわらかく、フモトミズナラの特徴をそなえているように思う。

標高450m 栃木県鬼怒川水系河川敷 11月4日
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コナラ。上のフモトミズナラより標高がある位置に生えていることになる。

標高240m 栃木県鬼怒川水系河川敷 12月3日
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コナラの幼樹は特徴が捉えにくく、混乱させられる。これも、鋸歯のとがり方の甘さ、葉柄の短さなど、判断がつきにくい。

標高240m 栃木県鬼怒川水系河川敷 12月3日
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葉柄が短いがコナラなのだろう。これも特徴が中途半端。

標高230m 栃木県鬼怒川水系河川敷 5月6日
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これぞ典型的なコナラなのだろう。
葉の表面に細かな毛があるので、光の当たり具合によって白っぽく見える特徴もそのもの。








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2018年11月26日

シロザケが上る川へ。-初冬の情景-

先日来、見つけていた鮭たちの遺骸はどうなっているだろう。
流れに降りる。

トビ、カラスなどがありついたようだ。
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肉の部分がきれいにそがれている。
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別の遺骸。その白く残された骨身に、ダイサギの白い羽が流れ着いて重なる。
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浅瀬に横たわるのは、つい先ほどまで泳いでいたかのような魚。鰓はもはや動いていない。額には傷が刻まれている。
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腐敗が先行してから浅瀬に乗り上げた遺骸は、分解されるときを静かに待っている。
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あたりを見渡せば、まだまだ、あちこちの水底に魚体が沈んでいる。


この季節、さまざまな生き物が世代を閉じていく。
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外国から渡ってきた草花も同じだ。
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いずれにも、命を全うする尊さがある。


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