2018年08月20日

ニホンジカの県北部への分布拡大を憂う。

久しぶりに、こういう森に出会った。ミズナラ、シラカバの林床にササが生い茂っている
もう少し早く来ていれば、ささやぶの中からコルリやウグイスの声が、かまびすしく聞こえてきたことだろう。日光市の隣の山塊の東面、県北部にあたるのだろうか。
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腰より上まで茂ったささやぶは、例えば、中禅寺湖畔千手が浜にも広がっていた。今や見る影もない。

すでに、ここもところどころ、ニホンジカの気配を感じる。
ササの茎の頂部の葉が食いちぎられている。
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幼木の葉にも食べられた跡が見受けられる。
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植林地に近いエリアはやはり、ササが失われている。
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リョウブの樹皮が食べられている。すでに実がついていたので、食べられたのは最近だろう。すぐそばに足跡も残っていた。
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ここにも牛の放牧場があり、日光と条件がよく似ている。

今夏、沼っ原湿原を歩いたときも、驚かされた。湿原内の幼木にニホンジカの食痕が多くみられた。湿地部分には足跡が多数。そして、なにより、草地の植物相が単調になっている。ニッコウキスゲの花は今年、ほとんど見られなかったようだ。

那須山塊の裾野の某集落でも、有害獣駆除にあたるハンターさんに出会った。こんなところにもいるのかと驚いた。ニホンジカ、ニホンザル、イノシシが確実に分布を広げているようだ。

外来種と違って、ニホンジカはもともといた動物である。この大型の哺乳類が、生態系のなかでどういう位置を担っていたのか私にはわからない。今回見た山塊の状態が、あるいは、微妙なバランスを保ちつつ、長らく続いてきたそれに近いものということか。現在の日光山塊で見ると、狩猟、有害駆除を含めた自然界での淘汰より、ニホンジカの増殖力のほうがはるかに上回っている。近世以降の記録について簡単に目を通してみても、オオカミがいた状態でさえ、その増殖力を抑え込むことがたいへんだったことがわかる。

この山塊は西部から中部にかけて、すでにヤマビルの分布が広がっているようだ。ニホンジカやイノシシやニホンザルが媒介しているのだろう。あまり声高にいわれていないが、やがては観光業、レジャー業には大きく影響していくことだろう。
私は単純に、コルリがかまびすしく鳴くささやぶが、恋しい。専門の方々、どうぞよろしく。

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2018年08月11日

ヒガラの地鳴きの特徴的な部分を拾ってみる

声紋がいろいろな形で現れるさえずりに比べて、地鳴きはある程度、傾向をつかむことができそうだ。聞き取りやすいチイという鳴き声を中心に、それらの音源を整理してみた。


■チイという声
並べて音を再生してみると、若干、声の強度に違いがあり、声紋上にも表れているように、最終的な音程の部分「イ」音が強調される場合もある。また、やや弱々しく低く出す場合もある。逆に、声紋の形状はそのままで2kHzくらい高い音を出すこともあるようだ。まだはっきり検証してないが、メジロの出す、よく似たチイという声は、声紋では少し波を打って表示されるように見受ける。
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■ツイという声
チイという声と合わせて、それより高域でかぎ状の声紋がよく見られる。文字にするとツイと表現できる。鳴きあいの信号に用いる声のようだ。どういう意味で語らっているかは、やはり今後、気にして観察していかなくてはならない。
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■ツツツという声
シジュウカラ、ヤマガラは、「シシシ」と、高い音域で短く声を連ねる鳴き方をする。それぞれ声紋は異なって現れるので、おおよそ個別に認識できる。ヒガラの場合は、高音域で多様な音を出していたり、コガラ、キクイタダキなど同様に高音で鳴く鳥と混群になっていることが多いので、特徴的な部分がわかりにくい。なんとなく拾い出したのは以下の鳴き方で、シジュウカラ、ヤマガラと違い、声紋が凸型に現れる音がある。実際は、キセキレイの出す「シシシ」の声に似ている感じがする。
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さえずり、地鳴きの規則性、多様性をほかのカラの仲間と比較してみると、ヒガラのさえずりは、個性を主張するために複雑になっていることがうかがえる。シジュウカラ、ヤマガラなどは、見晴らしのいいところに出て鳴くことがあるが、ヒガラは込み入った木立の向こうやそのなかで移動しながら鳴いていることが多い。シジュウカラは雌雄で胸の黒い帯の太さが異なり、それをディスプレイ時にも用いるらしいが、ヒガラは雌雄同色である点からしても、より、声をコミュニケーションの道具として深く活用しているということではないだろうか。






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2018年08月02日

続いて「ヒガラのさえずり」について

ヤマガラの鳴き声の整理、比較に続いて、同様の作業をシジュウカラでも行ってみたが、ヤマガラほどシンプルではないものの、声紋上で示される、いくつかの傾向がわかった。1音節を構成する音数や高低、上げ下げなど、複雑ではあるが、ヤマガラとは特徴がはっきり異なる。そのため、特に、春先に録音した弱々しいさえずりに関しては混同することもあったが、過去のデータをさかのぼって判定しなおすこともできた。
続いて取り掛かっているのはヒガラで、さえずりはツピン、ツピン、あるいはヒチピ、ヒチピなどと表され、声紋は上下に尖った形で表示される。しかし、それぞれの最小単位の音や音節の特徴という点ではヤマガラ、シジュウカラのようにはパターンがつかめない。というより、その多様さに驚かされた。
ツピン、ツピンと表現される鳴き方は、1音節2音で構成される鳴き方なのだろう。1音目、2音目とも、尻上がりだったり、尻下がりだったり、音域に幅がある音であったり、さまざま。
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左右からそれぞれ2番目の声紋はよく似ているが、4月の山梨県、6月の群馬県であり、環境も季節も違う。共通性を見出すすべは記録をさかのぼってもない。

ヒチピ、ヒチピと表現される3音で構成される鳴き方も同様に、ひとつずつの音質と組み合わせ方がさまざま。
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速さも異なり、いちばん右はとても早口に鳴いている。左ふたつは、声紋上、カタカナの「ル」に見える部分がよく似ている。録音はそれぞれ山梨県と栃木県の4月であり、地域性を示す特徴ではなく、繁殖にかかわる、なんらかの信号なのだろう。

これだけ多様であるのに、いずれの鳴き方もツピン、あるいはヒチピという言語変換に当てはまり、むしろなんら違和感がないのが不思議だ。声紋を並べてみてわかったが、ピと聞こえる部分の音程がほぼ同じなので、同じような音に聞こえているようだ。つまり、ここにそのトリックが見え隠れしているように感じる。核となる音はそれほど多くなく、それ以外の音は、各々が自由に工夫しているのかもしれない。人間は言語が発達してしまっているぶん、すべての音を拾上げてしかも言語によって単純化して理解しようとしてしまうが、逆に、それが鳥たちの戦略なのではないかと思う。核となる音、つまり真意をカモフラージュしてしまえば、鳥たち自身の生活にまつわる意思伝達を、ほかの動物から隠すことができるのであるから。

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2018年07月20日

「鳴き声の理解」の彼方への思い。

ヤマガラはいろいろな鳴き声を出す。特徴的な声が多いものの、シジュウカラの声と混同することもあり、整理してみるつもりで音源に当たってみた。声紋を確認していくと、いくつかパターンが見えたので簡単にまとめてみる。

さえずりは文字にすると、「ツツピー、ツツピー、ツツ」の繰り返しになるが、ツツの音程に二種類、ピーの音の変化に三種類あることがわかった。

■導入のツツ音節の音程の違い
 後節のツツより低い
 後節の音程と同じ

■ピー音節の音程の違い
 音が高くなっていく
 ほぼ平坦
 音が下がっていく

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この組み合わせ方はいろいろで、規則性は当然のことながら、まだ理解できていない。それと、こうして並べてみると、音域に違いがあるし、ツツ音節には音の濁り方にも種類がある。

「ニーニーニー」と表現される地鳴きにも、どうやら、対人間警戒系と種間威嚇によって濁り方に違いが見受けられる。とするならば、ひとくくりにされる「さえずり」も、音の要素によって、それぞれ意味をもたせているはずだ。興奮気味に鳴くさえずりを聞くと常々感じるが、さえずりに見せかけておいて、じつは警戒系であるなど、人間の解釈とは別の面の意味を帯びる信号として発していることもあり得る。

音を文字に変換してしまうとシンプルになってしまうが、質感を視覚化してみれば、新たな発見に出会うことが多い。そしてその複雑さに改めて驚かされる。
鳥たちは、音の高低、重ね方、長さなどを複雑に組み合わせてそれぞれの意味をもたせているはずで、人間の想像以上に、声によって親密な意思疎通を図っていると思われる。

いつか、その意味を正確に理解できる日が来るのだろうか。「こっちにこないで」、「その木切らないで」など言われたら、人間の、鳥や自然への接し方も変わっていくのにと思う。





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2018年06月22日

音符でさえずるキビタキ。

声紋を開いてめっちゃびっくり。
八分音符で音楽を奏でているキビタキでした。
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実際の音声はというと…。温存します。悪しからず。

2018年5月26日栃木県那須塩原市


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